LOVE・ラブ・らぶー先生が教えてくれたコトー





歩は涙を流しながら、身震いする身体を腕で押さえながら告白した。




「レイプ……されたのあたし。何かムービー撮ってたし多分売られたんだと思う。」



歩は先生にどんな反応をされているのか怖くて顔を上げられなかった。



下を向いたまま、



「何が何だか分からないまま、身体中いじられて、暴力もされた……。怖かった。誰かに助けて欲しかった。この前の怖い夢もその時の夢で、あの夜から夢でうなされるようになった……。そのぐらい怖かった……」



先生は眉間にシワを寄せながら聞く。



「その次の日、何事も無かったかのように接された……。」










歩は唇を噛み締めた。



「腹が立った……!その人達を見るのも怖くて、あたしその時、決めたの。逃げ出そうって。」



スカートを握りしめる力が強くなる。



「夜に先生達の目を盗んでまとめておいた荷物を持って逃げた。逃げて警察にチクってやった。」



歩はスカートを再度キュッと掴んだ。







「先生達は逮捕された。今はどうなったか知らないけど、服役中だと思う……」




話してるだけど身体が震えた。




「他の子たちは施設も決まった。あたしは今、バイトしてて、そのバイト先に住み込みで働かせてもらえるように頼んだ。」



歩は遠い目をした。



「その時はまだ中学生だったし、おまけに住み込みだからバイト先探すの大変だったな………」






歩は肩を震わせながら怒った。



「せっかくあたしは稼ぎながら頑張って学校にも通ってるのに………、何でイジメられなきゃならないのかな?」



涙は止まりそうにない。



「イジメられるの、もうイヤだよ。あたしは何のために学校に通ってるの?何のために生きてるの?」




ああ、もしも両親が死んでなかったら人生変わった?


ああ、もしも捨てられてなかったら人生変わってた?


ああ、もしも捨てられてた時、死んじゃってたらこんな思いしなかった?




もう……嫌だ。











「もう嫌。誰も信じられない。もう嫌………、」



先生は話を聞きながら、悔しそうに唇を噛み締めていた。




「何であたしだけこんな思いしなきゃいけないの?」




人生は不公平すぎるんだ。


なに不自由なく人生をおくれてる人だっているのに、何であたしは……。




「大人が怖いよ。人が怖いよ。誰もが怖いよ………!」




震える声で必死に告白した。






ガタッ!



先生がいきなりイスから立ち上がり、歩を抱き締めた。




「落ちついて。もう大丈夫だから」



歩はこんなこと初めてだったので顔が真っ赤になる。



「せ、先生?!っていうか涙で服が汚れ……」



先生は戸惑う歩の声を遮るように聞いてきた。






「怖いか?俺にこうされるのも」



「え?」



歩は先生の目を見た。



「いいよ、正直に教えて欲しい。」



歩はまた大粒の涙が溢れて下を見た。


歩は頷いた。



「怖いよ?先生もみんなと同じくらい。裏切られたらどうしようって思う。」



震えと、涙が止まらない。



「優しくされると思い出しちゃうの。だから怖い………。」










歩は唇を噛み締めた。



「イジメられたくない。優しくされたい。でも怖い。優しさが怖いよ……。これってわがままなのかな?」



先生は歩の髪を撫でる。



「わがままなんかじゃないよ?俺は黒瀬を裏切ったりなんかしないよ?黒瀬と出会えて初めて養護教諭やっててで楽しいと思えたんだから、」



先生は優しい声で言った。



先生の温もりが心地いい。





「先生……、」



歩は先生の背中に腕を伸ばし、白衣をキュッと掴み抱き締め、胸に顔を埋めた。



「黒瀬は独りで抱え込み過ぎだよ。独りで我慢するな。これからはツラくなったら俺に相談しな?」




先生、ズルい。



そんなこと言われたら嬉しくなるに決まってるじゃん。





歩は何度も何度も頷いた。


何だか『ここに居ていいんだよ』って言ってくれてる気がして嬉しかった。