「だから、あたしはアンタ達なんかには負けない……っ!」


そう言い放つと、巻き髪の女の子があたしを突き飛ばそうとした。


怖くなって、ギュッと目を瞑る。


だけど、女の子の手があたしに触れることはなかった。


「……穂香センパイをイジメるの、やめてもらえる?」


甘いのに、どこかトゲのある声にあたしは瞑っていた目をゆっくりと開ける。


あたしの瞳に映ったのは……


「愛、チャン……?」


ハチミツ色の髪をなびかせる愛チャンの姿だった。


「桜田……」


女の子達も呆気にとれている。


周りで見ていた野次馬の生徒達もザワザワとざわめきだした。


「なんで桜田が?」


「アイツが誰かをかばうなんてね」


「ちょっと意外……」


野次馬から発されている声には聞き耳もたてず、愛チャンは巻き髪の女の子を鋭く睨みつける。


その顔は、前に愛チャンがあたしを睨んだ時よりもずっと、恐ろしかった。


「言っておくけど、穂香センパイと楓クンはお似合いなカップルよ?」


愛チャンが冷たくそう言い放つと、女の子達の顔がだんだん歪んでいく。