「あたしは王子じゃないからわからないけどさ」
テーブルに置いてあったマグカップを手に取って、あーちゃんは続ける。
「もし早川爽が先に助けに来たら、穂香を譲る……なんて賭けてたりして?」
あーちゃんはエスパーだったりするから結構、勘が鋭い。
もしかしたら、あーちゃんが言うことは正しいのかもしれない……。
探しても探しても、見つからなかった答えが、やっとわかったような気がした。
まるで恋の迷宮の出口にたどり着いたみたいに……。
「……怒鳴ったりしてごめんね?」
あたしの顔を覗き込みながら、あーちゃんは悲しそうな顔を浮かべた。
泣いていたせいで、声が上手く出なくてあたしは精一杯、首を振った。
「でもね穂香、このまま王子に伝えなくていいの?」
「決めたんでしょ?」と、あーちゃんは確かめるようにあたしに言った。
あたしはコクリと頷いて、意を決して立ち上がる。