長髪の黒髪が揺れた。
それと同時に、あたしの肩にシャツが被さる。
胸元の熱を帯びた赤い印は、シャツで隠れた。
「……行けよ」
爽の掠れた声は、今にも消えてしまいそうだった。
「こんな情けねぇ姿、見られくねぇ……」
「爽……」
震える後ろ姿はまるで、“早く行け”とあたしを煽っているように見え例えば。
あたしはなにも言わずに、乱れた制服を整えて部屋を後にした。
外は、もう真っ暗で夜空にはいくつもの星が煌めいていた。
あたし…なにやってるんだろう……。
そっと、熱を帯びた胸元に触れる。
あたしの誕生日の日、楓がつけてくれた印と同じ場所だった。
だけど…違う。
例え、同じ場所に同じ印が付いていたとしても。
あたしの心は同じではなかった。
いつも、あたしは楓がつけてくれた印を目にするたび、ドキドキしてた。
あたしは本当に楓の彼女なんだって、感じられた。
だけど…。
この印は、あたしを悲しくさせる。
この現実から目を背けたくなる。