ブレザーは、いつの間に脱げていたのだろう……。


あたしのはだけたシャツのボタンを器用に外しながら爽は続けた。


「今夜は帰さない」


吐息混じりのその言葉はあたし達しかいない部屋に響いた。


右肩を強く押されて、あたしはまたベッドに倒れ込む。


爽は獲物に食らいつくようにあたしの首に唇を這わせた。


でも……決めたんだ。


もう迷わないって。


あたしは楓が好きだから。


たとえ、嫌われたって好きだから。


爽の気持ちを利用して、こんなことしちゃいけない。


……やっと気づけた。


あたしの中にある本当の気持ちに。


「……いや…っ!」


爽を思いっきり突っぱねて、あたしは鞄を抱え、部屋から飛び出そうとした。


「悪りぃ……穂香」


だけど、あたしの体はその言葉で止まる。


ゆっくり振り返ると、爽は乱れたシャツのままあたしを抱き締めた。


「そ、う…」


あたしの体を包む爽の体が震えてた。


「マジでカッコ悪りぃ……ごめんな、穂香」


ゆっくり体を離すと、爽は切なそうに微笑んで、近くにあったソファーに座り込んだ。