……好きなヤツ?
ふざけんなよ。
あれだけ柚月に期待させておいて。
俺の怒りとは裏腹に、涼しい顔して、ただ赤いランプを見つめる楓。
「好きなヤツって誰だよ?」
「……俺の幼なじみだ」
その表情は、嘘をついているようには見えなくて。
真剣な瞳で俺を見つめる楓から目を逸らせなかった。
「それ、柚月に言ったのか?」
楓はなにも言わずに頷く。
「お前、最低だな」
柚月が楓を好きなのは、とっくから知ってたくせに。
中途半端に優しくしてんじゃねぇよ。
「……だったらお前はなにが出来た?」
「あ?」
俺がそう答えた途端、楓が俺の胸倉を掴んだ。
「柚月に冷たく出来たのかよっ!」
……それ以上はなにも言えなかった。
柚月は生まれつき体が弱い。
そのため、小学校の頃から入退院を繰り返してた。
……医者に、長生きは出来ないと言われたらしい。
だけど、アイツは一言たりとも弱音を吐かず、いつだって笑顔だった。
いつか、柚月は言った。
――『死ぬまでに、一度だけ恋をしたい』