紫色のバラがあしらわれているネイル。
とっても邪悪だった。
「あたしはこっちのバラが好きです」
その言葉とは裏腹に無邪気な笑顔をニコッと向ける。
この子は、なんて残酷な女の子なんだろう……。
「だから、気をつけてくださいね?」
言葉を失っていたあたしに、降りてきた一言。
……気をつける?
「“綺麗なバラにはトゲがある”と言うことを」
“綺麗なバラにはトゲがある”
それはどこかで聞いたことのあるような言葉。
「あたしからの忠告、ですよ?」
そう言うと、愛チャンは非常階段を去っていった。
……忠告?
愛チャンは一体、何を言ってるの……?
モヤモヤとした気持ちを抱えながら、あたしは愛チャンの降りて行った階段をしばらく見つめていた。