『まぁとりあえずは安心した…。未来も、あんまり気にしないようにね… じゃあ、とりあえず伝えたかっただけだから…』
「うん、ありがと。またね。」
私は、電話を切った。
晴香はちょっと無愛想だけど、本当は優しいんだ。今も、私の心境をきっと分かってくれてる。

トイレから出て、
進路指導室へと向かう私。
先生、もういるのかな。
一体今、どんな気持ちなんだろう……

ガラッ
ドアを開ける。

「おっ!! やっと来たなぁー。大遅刻だぞー。」

……アレ?
先生は、いつも通りだった。
まるで何事もなかったかのように、私に振る舞う。

先生にとっては、慣れすぎて
どうでもいい事なのかなぁ…
ちょっと 悲しくなる。

「おい、ボーッとしてねぇでやるぞ!!」

ポスッ、と私の頭に手を置く先生。
こんな時でも、
私の心臓はドキドキしてる…。
言われるがまま、席に着き、教科書、ノートを机に置く。

「……あ、筆箱忘れて来た。」あまりにも急ぎすぎて、
筆箱を持って来ていなかった。
「全く……ドジだなぁ。」
アハハ、と先生の笑い声。
少し 切なくなる。
今井さんとの出来事は、
なかったかのようにされてる
みたいな気がして。

机だけを見つめる私に、
先生はまた困った顔をする。

「またかぁ… ホント、何かあったの? お前。」
私の顔を覗き込んでくる先生。ついに私は 言ってしまった。

「何かあったのは先生の方でしょ!!」

先生の目が丸くなる。
そりゃ、いきなりそんなこと言われても ビビるよね……。

「何かって……?」

「今井さんのこと!! 私 聞いたんだからね…。 告白されたんでしょ?」

ピンと来ていなかったようだったけど、その言葉を聞いて、先生は 困ったように頭を掻いた。

「ああ…、そんなことまで知ってるの… 鋭いね、お前たち。」

「よく、そんな平然としていられるよね? 慣れなの?」

半分、怒ったような強い口調の私に、先生も困っている。

「慣れぇ? いやぁ、そんなんじゃねーけど… まさかお前がこの事知ってるだなんて思わないから…… 普通にしとかないとって思うだろ?」

情報回るの早すぎ、と呆れる先生。