「でも、先生も困る…でしょ?生徒となんて付き合えるワケもないし、生徒は生徒なんでしょ…?」
ちょ、私、おかしいよ……
ヤケクソになっちゃってるみたい。
うーん、と唸る先生。
「まぁ、確かに困らないって言えば嘘になるかなぁ。先生と生徒って、難しい関係だもんな。」
そっか……
困るんだ。
じゃあ…、やっぱり
この想い、伝えない方がいいんだ。
「そっかぁ… 先生ってみんなそんなものなのかなぁ。じゃあ、先生を好きになった子はかわいそうだね……。」
半分、自分への慰めに過ぎない言葉。
心の中は、結構ズタズタ。
「恋なんてものは、自分じゃどうしようもないからなぁ。」
腕を組んで
うーんと考え込む先生。
静まり返る 室内。
この空気を作っちゃったのは、私なんだけど。
「私、やっぱり数学する…。」
沈黙に耐えられなくて、
教科書とノートを開いて
問題を解きはじめる。
先生は、頬杖をついて
私のノートを見つめていた。
「そこ、違う。」
たまに、間違いを指摘して教えてくれた。
「……はぁ。」
手を止めてため息をつく。
ダメだ。心がモヤモヤする。
今井さんのこと。
先生の彼女のこと。
生徒に好きになられるのは
困るってこと。
今日、ツイてなさすぎ。
せっかく、目の前には大好きな先生がいるのに…
先生を見つめた。
胸が苦しいよ。
すごく切ない。
先生……やっぱ生徒なんて
ムリ?
「……。」
先生も困った顔で私を見つめる。
数十秒間、
見つめ合ったままの2人。
ふいに、チャイムが鳴って
私たちは我に返り、
互いに目を逸らした。
今、先生は何を思っていたんだろう?