私の最高な気分は、
一瞬にして最低になった。
そこにまた、追い打ちをかけるかのように、険しい顔の晴香が歩み寄って来て私に言う。
「ちょっと、未来!! アンタ知ってる!? 今井さん、一之瀬のこと 狙ってるらしいよ!!」
ヒソヒソ声とは言え、耳元で今1番聞きたくないような事を言われては、さらに気が滅入ってしまう。
「うん……、そうかもね。」
朝の今井さんを見てれば
私でも気づくよ…。
今までは、自分が先生と
仲良くなれたことで有頂天になって 周りが見えてなかったけど、実際 先生を好きな子は、私だけじゃないんだって実感した。
今井さんだけじゃないはずだよね。
はぁ…、気分ガタ落ち……。
「まぁ、元気出しなよ。実際、アンタの方が 仲良いんだし。」
「うん…。」
元気なんて出ないよぅ。
ライバルがいっぱいいるんだって知ったら、
気が気じゃないよ。
私、誰かに先生を取られたくない。
私だけのモノじゃなくていいから、だからせめて…誰かのモノにもならないで欲しい…。
2時間目。
大好きな先生の
大好きな授業だと言うのに
全然気分が乗らなかった。
いつも通り遅れてくる先生に、「先生ってば、遅~い!!」
って言う、今井さんのあの甘い声を聞いたから…。
今井さんの そのセリフに、
晴香がムスッとした顔で
私を見てくる。
『何アイツ!!』
って 目で合図してる。
私は、眉を下げて
唇を噛みしめるだけだった。
今井さんは、やっぱり
先生が好きなんだ。
あの甘い声は、好きな人にだけ出すものなんじゃないかな。
悩殺のとっておきの甘い声。
男の人は、あの声で口説かれたらイチコロなのかな…。
あの声を聞いて、
先生は何て思ってるの?
今井さんのこと
意識しちゃうの…?