しばらく頑張って問題を解いていたけど、途中、ワケ分からなくなって先生にやり方を聞いた。すると先生は、

「ココ、こうした方が解きやすいよ。俺流だけど、誰にも教えてねーんだ。お前だけに教えてやる!!」
って ヒソヒソ声で言うんだ。

お前だけに………

その響きが嬉しすぎて。


また先生と私だけの秘密が
増えたね。

私と先生はそれから、
問題を解きながら 世間話をしたりした。


すごく楽しいひとときで、
このまま時が止まればいいのにって、さっきとは逆の事を思う私。

でも、楽しい時間ほど
過ぎるのは早いもので。


「おーし、じゃあ今日はこんぐらいにしとくかぁー。」


先生が 伸びをして、
教科書をパタンと閉じる。

もう さようならかぁ……


しょんぼりする私に、
先生は笑顔で言う。

「明日も、ここでやるかぁ!!」

「ここで?」

「狭いけど、静かでいいだろ。今日はお前、集中力あったし、こっちの方が集中出来るだろ?」

「うん…!!」

やったぁ…!!
生徒なんて ほとんど通らない、4階の この静かな空間。


誰にも邪魔されない、
私と先生だけの 2人きりの空間だぁ……!!

「あ、明日数学あったよなぁ?お前、またボケーっとしてたら当てるぞ?」

片方の目を細めて
いつもの意地悪な笑みを浮かべる先生。


「が、頑張るもん……!!」

明日からは、
先生が私を少しでも見てくれるってことだよね?


今まで ただの生徒の1人だった私が、少しは進歩出来たのかな。

先生になら、何度当てられたって平気…

「頑張れよ。」

ポン、と私の頭に手を置いて、部屋から出る先生。

また、触れた……
ドキドキしながら、
私も 外に出る。


「じゃ、また明日。さよーなら!!」


軽く手を上げて、
先生は歩き始めた。

「さよ、なら…」


先生の大きな背中が見える。


あの背中に、
走って 抱き着くことが出来たなら。

本当は 飛びつきたい。
あの大きな背中を
今すぐ 抱きしめたい―…。

いつの間にか、欲張りになってく私がいるんだ……。