「でも先輩はこれから大変ですね。受験勉強。少しランクが高いんでしょ?」

「ううっ…! 言わないでよ。くじけそうになるから」

「まだ時間がありますから、じっくり頑張ってください」

「う~…」

本気で落ち込みかけている彼女を見て、ちょっとかわいそうな気がした。

ちょうどそこで、あの山を通りかかった。

「先輩、気晴らしに花見しましょうか?」

「花見? あっ、この山…」

「はい、先輩とはじめて出会った山です」

まだ桜は咲き始めといったところだが、それでも屋台はもう出ている。

「何か食べましょうよ。奢りますよ?」

「ホント? じゃあクレープ食べたい! イチゴの!」

嬉しそうにオレの腕にしがみついてくる行動は、年上とは思えないな。

「はいはい。じゃあ行きましょうか」

屋台でクレープを買って、二人並んで頂上を目指して歩く。

「ここに来るのも久し振りね♪ 最後に来たのはお正月の初詣だったかしら?」

「そうですね。合格祈願参りしましたから。そこでお守りを先輩に買ってあげましたね」

「来年はわたしが買ってあげるね」

「もし先輩が合格したら、そのお守りをくださいよ」

「『もし』って何よ!」

「だってまだ、決まったわけでもないですしねぇ」

「う~! あなたってそういうとこ、イジワルよね」

「先輩があんまり可愛いから、イジメたくなるんですよ」

「…そういう恥ずかしいことは、アッサリ言うし」

「先輩の彼氏ですからね」

「ふぅ~んだ!」

彼女はむくれながらも、黙々とクレープを食べる。

やがて頂上にたどり着く頃には、2人ともクレープを食べ終えていた。