「汚い」 「ごめんなさいっ!」 口を開いたのはほぼ同時だった。 慌てておしぼりを手渡す。 顔を拭きながら、先輩はにやりと笑った。 「気付いてないのは本人だけだろうね…」 はたりと力の抜けた腕が、テーブルのグラスを引っ繰り返す。 派手に音を立ててグラスが弾け飛んだ。 「じゅんじゅん~、頼むよぉ」 先輩の呆れ顔に、申し開く言葉もない。