…気付けば、優子はいつもの公園のベンチに腰掛けていた。だが、いつもの様に、シャボン玉を吹く訳でも無く、ただひたすらぼうっとしていた。
例え様の無い、心の中の様子。重っくるしい、何も考えられない、いつも浴びている木漏れ日や、普段なら優しく優子を包みこんでくれるそよ風さえも、うっとおしく感じられる。自分の周りの、見える物、感じられる物全てに心の中でつぶやいた。


―今は独りにしておいて―


夕暮れ。未だ優子は、公園のベンチから立ち上がれずにへたりこんでいる。
「これが、失恋ってやつなのね…」
やっと、弱々しくも言葉として口から出て来たものがそれだった。その瞬間、優子は自分の中で、シャボン玉のごとく、様々に混じりあって膨れあがった感情が、ぱちんとはじける音を確かに聞いた。
…ほおをつたう涙を拭こうとはせずに、優子はただじっと、涙色のフィルター越しに正面に移る風景を見つめていた。