そう言って、優子がベンチから立ち上がって、ケイから離れようとした時、ケイは優子を呼び止めた。
「待って…」
「?」
と、優子はケイの方を振り返った、と、その瞬間、優子は、えっ!?という表情を浮かべた。


―ほ、包帯?―


振り返った優子に、ケイは自分の左腕にぐるぐる巻きにされた包帯を見せつけていた。
「…もし、万が一の事があれば、君の心の傷、僕が請け負ってあげる…」
唖然として立ち尽くす優子をそのままに、ケイは優子の前から音も無く立ち去っていった。


クラスの女子達の噂話が真実と知ったのは、不思議な少年、夕霧ケイと出会った日から数えて、丁度三日後のことだった。下校時刻。校門から、今正に出て行かんとする雪野ひろを追いかけて、話しかけようとしたその刹那、校門の外から、ひろにそっと近付いてきた見知らぬ女の子の影が見えた…