自分で相手を押し倒しておいて、手を貸してやると、随分と勝手な言い草の真琴であったが、その少年もその少年で、あたかも自分で倒れてしまい、その自分に手を差し延べてくれた親切な人とでも言いたいかのごとく、引き起こしてもらった後で軽く、真琴に頭を下げた。


…それから更に時間が過ぎ、相変わらず二人は一向に止む気配の無い雨を眺めていた。
だが、ふと思い付いた様に真琴はすっくと立ち上がると、
「思い切って、飛び出しちゃおうか。家、すぐそこなんだ。おいでよ。」
そう言って、真琴はその少年の手を握ろうとした。しかし、その少年は真琴に言った。
「…濡れるの、やだよ…」
「でも、止む気配は無いわよ。う~ん、どうしようか…!?あれ?」
真琴はふと、その少年の斜め右後ろに、少し古ぼけた赤い傘が床に落ちているのを発見した。
「いい物…見ぃ~っつけたっ!」
真琴はそう言って立ち上がると、その傘を拾い上げて、その少年の方を振り向いて右目でウィンクをしながら言った。
「…相合い傘、しよ?」