…しばらくして、真琴は、おやっ、と、妙な違和感を感じた。背後で人の気配がする。真琴がくるっとふりかえると、果たして、そこには人が一人ぽつんと立っていた。
歳は、十五、六といった所か。ショートカットの黒髪、左目に泣きぼくろ、そしてまるで人形の様な容姿をした綺麗な少年が立っていた。頭から靴先までしっとりと濡れ、それがその少年の美しさを妖しいまでにしていた。そしてまた、その少年も真琴と同様、この雨降りの情景をじっと見つめていた。
真琴は、その少年に言った。
「…あなたも、雨宿り？」
真琴に声をかけられたその少年は、真琴の方を向き答えた。
「…ええ。」
「…良かったら、ここに座らない？」
そう言って真琴は、自分の左横をぽんぽんとたたいた。
「…」
その少年は、真琴に言われるがままに、真琴の左隣りに座った。