その風景は、例えるなら、水を含み過ぎた筆で描かれた、水彩画とでも言えようか。
…あんなに青々としていた天と、あんなにたくましく赤茶色、そして薄黄緑色混じっていた地が、その水分のせいで、明確な境界線を失ってしまっている様に映る。
そして、その境界線からにじみ出た色同士が様々に混ざり合い、薄汚れた作品へと変化してゆく。この梅雨の季節が演出する、独特の光景。


…一言で言えば、陰鬱。


ところが、この真琴と言う少女は、そんな雨降りの六月に、ひどく親近感を覚えていた。


―この景色は、私の心模様。例え、梅雨明け宣言がなされたとしても、私の中の梅雨は、決して明ける事は無いわ。私の初恋は、まだ続いている。そう、まだ終わっていないのよ―


心の中でそうつぶやきながら遠い目で、真琴は、その皆から嫌われた風景を眺め続けていた。