それ以来、麗華とケイは、二度と出会う事はなかった。麗華が無事、その少年に想いを伝えられたのかどうか、そして、その少年が、どういった最期を迎えたのか。ケイは確かめようとはしなかった。
ただいつもなら、しばらくの間、疼きのある新しいリストカットの傷跡が、初めて起こらなかった事に、ケイは驚きそして悟った。
「…良かった。初めて、最初から最後まで、女の子を悲しませる事がなかったんだ。」
信号待ちをするケイ。無表情ではあったが、心の中は、満たされた気持ちで一杯だった。
もちろん、時が経てばいつもの様に、ひどく困難な自分探しの旅に、ケイは出かけないといけない。自分の事を想いながら死んでいった少女「ほのか」。その少女は、死の間際、ケイに伝えた。


―あなたは、壊れてしまった、いいえ、自ら壊してしまった、「人を好きになる感情」のかけら達を取り戻さないといけない―