あくまで無表情だが、人形の様に綺麗過ぎる容姿と雪の様に透き通る肌、そして、その美しさとは対照的な、目を背けてしまう様な、リストカットの傷跡。
完璧では無いだけに、かえってそれが、この夕霧ケイという少年を神秘化させているのか…そんな事を考えていく内に、ふと、以前どこかでとある噂を耳にした事を思い出してはっとした。


―少女達の初恋の傷を請け負う少年…通り名は、ロマンス・カッター―


「ケイ君!?」
麗華は突然、大きな声を出してケイの名を呼んだ。
「もしかして、君が、あの噂の…」
「告白は…しないの?」
「えっ…」



「…出来る訳、無いやんか。人生最期の時を、自分の愛する音楽に抱かれながら死のうとしとる人に。何考えとるねんって話や。
医師にもらった特殊な薬で頭痛を抑えながら、病魔と戦いながら…残り少ない…日々を…一生懸命生きようとしている…人…に…ううっ、ぐすっ…告白やなんて、そんなん、ただの自分のエゴやないの!」