突然ではあっても、ケイに今から見せつけられようとしている光景は、予測は出来ている物であったので、それほど驚きはしなかったが、それでもやはり、多少は顔をしかめてしまった。


―生々しい、リストカットの傷跡!―


一瞬の沈黙が流れた後、再びケイは、話を再開しだした。
「…しかし初恋の終わりを、見届けるだけではだめよ、と。忘れる事無く、その身体に、刻んでいきなさいよ、と…最期に彼女は、身を持って僕に教えてくれたんだ。」
そう言ってケイは、今まで刻んできた、様々な女の子の初恋の骸達をじっと見つめていた。


―異常…―


狂気じみた、恋愛の学習方法。しかし、何の疑うことも無く、ひたすらとその方法を実践する少年、夕霧ケイ。麗華は、出会って初めて、この目の前にいる少年が、怖いと思った。
だが、何だろう。怖いとは言っても、一般的に言う、生命的危機を感じる恐怖では無く、なぜか神や仏に対する「畏怖・畏敬」に近いものを感じた。