麗華とケイが別れてから四日後、街中で偶然、麗華とケイは再び再会し、例の喫茶店へ二人は足を運んだ。しかし、その日の麗華は、その日の天気とは対照的に、ひどく思い詰めた、曇った表情をしていた。
毎日が楽しくないと思っていた頃の麗華の、その表情とは少し違った感じであった。そして、ソファーに腰掛けるなり麗華は、ケイに対して、溜め息混じりに語り出した。
「こんな気持ち、初めてや…どんな子かも知らんのに、ただ、その子の弾くピアノの音色を聞いてただけやのに、…好きになってしまったみたいや、その子の事が。」
「…」
「でも、でもな…」
そこまで言うと麗華は、急に涙ぐみながら、弱々しく語り出した。
「…その子、もう、長くないんやって。噂では、原因不明の脳腫瘍を抱えてて、長くても、後五日ぐらいしかもたへんねんて。どうせ死ぬんやったら、病院じゃなくて、好きなピアノの上で死にたいんやって…」