麗華がそう言った瞬間、ケイの手から、ティーカップが滑り落ちた。白いテーブル一面に、お茶が散乱する。そしてケイは、急に体を小刻みに震わせながら、その体の震えを必死で押さえようとするかの様に、例の、包帯でぐるぐる巻きにされている左腕を、ぐぐぐっと右手で力強く握り締めた。
「ど、どないしたん一体!?」
何事が起こったのかと、麗華は急いで立ち上がると、ケイの方へ駆け寄った。店員も、麗華の叫び声を聞いて、二人のもとへ駆け寄って来た…


それから二十分程過ぎたであろうか。ケイは今、ソファーの上で、麗華に膝枕をしてもらって横になっていた。ケイの様子も随分と落ち着き、体の震えもすでになくなっていた。心配そうな面持ちで麗華は、ケイの頭の上から話しかけた。
「…大丈夫?」
その問いに対して、ケイはうなずく代わりに、両目でめくばせしてみせた。