「へえっ。良く分かったなあ。ちょっとクセはあるけど、慣れたらたまらんよ、これ。」
「同じクセでも、僕は、ジャスミンティーの方がいいな。」
その少年は、その味が苦手らしく、ちびり、ちびりと、まるで毒味をするかの様に、慎重にそのお茶を飲んでいる。
「あははっ、君やったら、常にこのお茶頼んだら、いつまででもこの店に居座れて非常に経済的やな。」
そう言って麗華は、両手でほおづえをつきながら、満面の笑みを浮かべた。
麗華がここまでニコニコする事は、非常に珍しい事であった。特に、この街に引っ越しして来てからは、こんなに笑顔であった記憶は、麗華自身にも無い。その理由は、麗華にもはっきりと分かっていた。
「…それにしても、本当に可愛いな、君。なんかこう、頭をなでなでしてあげたくなるわぁ。」
これが、世に言う「母性本能をくすぐる」というやつなのかと、麗華は、照れもせずに素直に思えた。