…この世の朝の到来を思わせるかの様な、優しく響き渡るクラシック。そしてその音楽の世界観を、リアルに再現したかの様な、店内の装飾。ソファーの横にも、ショーケース越しに、中世の、湖に囲まれた古城のジオラマが飾られていて、来客を中世にタイムトリップさせる水先案内人となっている。
あえて苦言を言えば、湖に浮かぶ三羽の白鳥には、少しわざとらしさが目立つが、それもご愛嬌と言った所であろう。今二人は、とある喫茶店で、少し遅めのモーニングを取っている。そこには、まるで先程とはうってかわって、ひどく上機嫌な麗華がいた。
「…はあ、やっぱりここが一番くつろげるわぁ。まずは、ウチの朝は、ここから出発進行するねん。このお茶が、ウチの朝の全てや。学校なんか、下らなくていっとれません。」
「…サボり?」
「そうや。」
麗華は、あっけらかんとして言い放った。
「…『マジェスティー』。これって、薫製…茶?」