三人組の男達の一人が、その少年の顔めがけて拳を振りおろした。
三人の中でも特に、ボディビルの様な体格の、岩の様な、その男の大きな拳。まともにくらっては、見た目に、今にも折れてしまいそうなこの少年でなくても、顔がひしゃげてしまうだろう。
「メキメキッ!」
…耳障りな音と共に、白い壁に、さあっと血が飛び散った。いつも、殴り付けた相手の鼻が折れる感触を、拳を通して味わい、卑猥な笑みをこぼすのが、この男の悪趣味であった。
しかし、意外にも今日は、男は拳を通してではなく、自らの鼻を持って、激痛と共にその感触を味わう事となった。
「がひっ!?」
その男は、妙な悲鳴をあげながら、顔面から壁に激突していた。鼻はひしゃげ、前歯も何本か折れている様に思える。その男はもちろん、拳を振りおろした勢いで、自分自身で壁に激突した訳ではない。