次の日の昼下がり。いつもの公園で、優子は自分の指定席に座って考え事をしていた。
「ロマンス・カッター、か。何にしても、不思議な子だったなあ。」


―「ロマンス・カッター!?何なのよそれ?」
「あら、知らないの優子?恋する乙女の間では有名よ?
『何処の誰だか分からない、でも、恋する少女なら知っている、その通り名を。
少女達の初恋の傷を我が左腕に刻み、新たなロマンスへと向かって行く為の後押しをしてくれる。
人呼んで、ロマンス・カッター!』ってね。」―


「…あんなに、恋なんてしなきゃ良かった、なんてふさぎこんでいたのに、『ありがとう』って、言えた。…あなたにも、ありがとう、夕霧ケイ。」
今日は、優子は一度もシャボン玉を吹いてはいない。いや、もう少なくともこの公園で吹くことは無いと心に決めていた。
「いつまでも、くよくよしていられない!ただ、最後にあの場所でもう一度…今度の週末に。」
そう言って、優子はベンチから立ち上がって空を見つめた。