♪〜



静かだった空間に携帯の着うたが流れ出した。




「ちょ、ごめん。…電話だ」


桐生くんはそう言いながらお店の端っこに移動した。




『もしもしぃ?…ん、いや―…うん。…無理無理。ん、ゴメン』



今、大切な人と過ごしてるから。

そう言った桐生くんは素早く電話を切った。








「大切な人って?」



あたしは堪らず、聞いてしまった。




「え?…あぁ、聞こえてたの?」


食器洗いに真剣だった顔が笑顔になって、




「だって、伊咲さんは大切な人じゃん」



と言った。