少しの情報しか与えていないのに女はすぐに来た。
「それでね、それでね」
来た女は 雅 という名前で、来たときからずっと話しっぱなしだ。
甘ったるい声と甘ったるい匂いがまじで無理。
…伊咲さんが恋しい。
時々 伊咲さんの視線を感じるけどそっちを見ると逸らされる。
少しは気にしてくれてんのかな?
なんて淡い期待を抱いてみるけどそんなわけがない。
ガッシャーン――
店内に大きな音が響いた。
音がしたほうに目をやると伊咲さんが割れた大きな皿を拾おうとしているのが目にはいった。
「伊咲さん 触っちゃだめだよ」
すぐに駆け寄り、そう言って伊咲さんの腕を引いた。