叫ぶ声が聞こえる

嘆く声が聞こえる

必死に逃げる
羽音が聞こえてくる

花に溢れていたはずの故郷が…揺れて消えていく


「やめて……」

かすれた声が聞こえる

呼吸が上手くできない

もう
最期が来たのだろうか


最後の一輪も消えていく

藍色の花一片がひらりと
目の前を通り過ぎた
なんて綺麗で残酷な光景

失う…失う…失う


訪れるのは、
あなたが決めた終焉の時



【PAIN】



重く閉じた瞼を開き、寝台から身体を起こさずに辺りを見渡す
アルビノの瞳に写るのは白、真っ白な部屋


白に染まりすぎた部屋に、
恐怖を覚えて寝台から起きあがると
部屋の隅にある一輪の花が優しく揺れた



真っ白に染まった世界の中、花を眺め
さっきまで見ていたユメを反芻する

私たちは花を守り、そして守られて生きてきた
妖精は守護するものがなくなれば、
その命も消え失せてしまう
それを知らぬ人間がその生活を豊かにしようとするたび、
自然界のバランスは崩れていった


だから…人間は嫌い
それでも…

「この子がいるから、私はまだ息をしていられる…。」

「それは良かった」


ため息と共におちた声
その言葉に返答がきたことに驚き、
この部屋に一つしかない扉を見れば
老いた人間がこちらの様子を見ていた

「おはよう、胡蝶」

「きらい」

「今日も元気そうだね」

「なんで花を置くの」

「朝食の前に散歩をしようか」

「殺したくせに」

「君はまだ殺してないよ」

至極冷静な様子で老人は言葉を発した


「だからっ…」



静寂が部屋を包んだ

かみ合わない話がかみ合ったことに驚いたのか
それとも目の前の老人の発した一言に驚いたのか
もう自分でもわからなかった