「ごめんなさい、少しここで待っていてください。」
一言言うと彼女は、目の前の部屋に入っていった。
おそらく自室なのだろう。
言われた通り、部屋の前で待つことにした青年は、縁側に腰を下ろした。
彼女にいったいどのように説明すればいいのか、正直に話して信じてもらえるのか、第一に本当にここは新選組が生きる時代なのか、考えることは山ほどあった。
必死に考えをめぐらせているときだった。
「おめぇ、何もんだ?」
「ひっ!」
いきなり後から、首筋に冷たいものが当てられた。
刀だと理解すると同時に、体が震えだした。
「見たことねぇ着物だな、どうやってここに入った?」
「・・・あっ、の・・・」
死ぬかも知れない。
生まれて初めて死を感じた青年は、うまく言葉を発することが出来ないでいた。
「分かりやすい間者か?」
そういって、首に当たった刀に少し力が加わったときだった。