いつもの光景を頭に思い描いて、奥村は困惑した表情だ。
その様子に、何か確証を得たように山崎は頷いた。

「・・・遅かったか。巻き込まれたかもしれん。」
「巻き込まれたって・・・まさか。」

山崎は辺りを見回すと、奥村に言った。

「お前、剣術が出来るんやったな。」
「え、い、一応は。」
「俺は今から隊長に伝えに行く。まだこの近くに二人がおるかもしれん。探せ。」

突然の状況に、奥村は戸惑いを隠せない。

「え、ちょっと待ってください。だったら、俺が夜風さんを探しに行きます。山崎さんが二人を探したほうが、助けられるんじゃ。」
「あほ。お前が隊長を探したら日がくれるわ。そのほうがあいつらの助かる可能性が低なるやろ。すぐ戻ってくる。戦えとは言うてへん。探せ言うとんのや。」

奥村の訴えを一蹴すると、山崎は走り去ってしまった。
残された奥村は、とにかく必死で状況を理解しようとした。

「・・・とりあえず、さきとゲン太が噂の惨殺事件に巻き込まれたかもって事だよな。」

なんとか事の重大さを悟った奥村は、少しづつ震え始める自分の足に何とか力を入れ、境内の中へと足を進めていった。

自分が探さなくては、今この瞬間にも、二人は殺されかけているのかもしれないのだ。
その事実だけが、奥村を必死に動かしていた。