丁度そのころ、休憩を貰った奥村は、いつものように寺の境内に足を運んでいた。
さきとゲン太の遊び相手をするためだ。
今日は、賄方で働いているおばさんから団子を貰ったので、二人と食べようと足を速めた。

寺の境内が視界に入ったとき、境内の入り口に見知った人を見かけた。
その珍しい訪問者に、奥村は首を傾げながらも声をかけた。

「山崎さん?」
「奥村か。お疲れさん。」

いつもの忍装束ではなく、着物姿の山崎である。
最近は、零の任務で飛び回っているのか、普段からあまり姿を見せない山崎を見たのは本当に久しぶりだった。

「どうされたんですか?」
「あぁ、隊長が面倒見とる餓鬼がおるやろ?ちょぉ気になってな。」
「さきとゲン太ですか?」

奥村は、零が抱えている任務の内容を知らない。
しかし、近所の噂話が好きな賄方の女衆から、子供の惨殺事件が頻発していることは知っていた。
まさかそれと、零の任務が関係しているとは思っていなかったが、山崎が現れたことにとって、奥村は何かを感じ取った。

「そいつらは俺を知らんからな。声はかけんと様子だけ見にきたんや。」
「そうなんですか。いつもこの時間は境内で遊んで・・・るはずなんですけど、あれ。」

山崎と話しながら境内に視線を向けた奥村は首を傾げた。

「・・・やっぱ、おらんのか。」

奥村の様子に、山崎が声をかけた。
その問いに、奥村は頷いた。

「おかしいですね、いつも俺、この時間に来るんで、最近は入り口まで出てきて待っててくれるんですけど・・・。」