「現行犯で捕まえることが、一番確実かと思います。」

山崎の提案に、優希も頷いた。
現行犯ならば、言い逃れすることは出来ない。

「なら、鈴木に零を全員つける。3人で、鈴木を徹底的に見張って、子供に刀を向けた瞬間を取り押さえるしかない。」
「隊長は、どうなさいますか?」
「・・・ちょっと、何かしっくりこない気がするんだよね。」

そう呟いて、考えに落ちる優希を山崎は黙って見つめていた。

「別に、何か疑問があるわけじゃないんだけど・・・。」
「・・・お得意の勘ですか?」
「そんな感じかな。・・・とりあえず、私はここ近辺の見回りに走る。烝は、朝になったら、藤野と大杉と打ち合わせて、鈴木について。」
「承知しました。」

そういって頭を下げ、部屋を出ようとする山崎に、優希が声をかけた。

「烝、ゆっくり休んでね。」
「あぁ、お前もちょっとは寝ぇよ。藤野が心配しとったわ。」
「はは、藤野君、人一倍心配性だから。」
「笑うなら、その目の下のでっかい隈、取ってからにせぇ。」

それだけ言うと、山崎は部屋を出て行った。
そんな山崎の後姿を見て、優希は一人残った部屋で小さく微笑んだ。

「烝も、結構な心配性ね。優しい部下ばっかで、本当、幸せだなぁ。」

働き続けているここ数日、久しぶりにゆっくり寝てみようかと思えた。
そして、それと同時に優希の中で確信があること。

「皆、休んでおいて。きっと近いうちに、また何か・・・。」

山崎が出て行った障子の隙間から見えたのは、悲しい程に綺麗な星空だった。