優希が、忍に襲われた夜。
永倉と奥村が部屋を出た後、優希はずっと山崎の帰りを自室で待っていた。
優希は基本、部下が働いている間に自分が休むことはない。
もちろん、部下が自分の体を心配してくれていることも知っている。
こうしている間に、少しでも体を休めておくことも、隊長の役目なのかもしれないとも思っている。
でも、どうしても気になってしまうのだ。
部下の実力に、不安を感じているわけではない。
むしろ、三人の部下には、絶大な信頼を置いている。
それでも、危険に身をさらしている部下がいるのに、自分が布団に入ることは、優希にはどうしても出来なかった。
そうやって待つ山崎が姿を現したのは、永倉と奥村が部屋を後にしてから、一刻程過ぎた頃だった。
「隊長、ただ今戻りました。」
「お疲れ様。中に入って。」
失礼します。と優希の前に姿を見せた山崎は、優希の前に座った。
さすがに顔には、疲れの色が見えていた。
「烝、どうだった?」
「あの忍の遺体は、鈴木の部下達が回収していきました。」
鈴木とは、優希たちが犯人として候補に挙げた四人のうちの一人で、藤野を見張りにつけている相手だった。
「ということは、鈴木で決まりかな。」
「おそらく。ただ、証拠が何もありません。」
「そうなんだよね・・・。」
今までの子供の惨殺事件、目撃者が誰もいないのだ。
もちろん、現場に何か手がかりが残っている訳でもない。
優希たちも、それゆえに四人から候補を絞ることが出来ないでいたのだ。