「はい。出来ました。」
奥村が優希の部屋に来て、傷の手当をしてくれていた。
清潔な布で、片方の頬を覆われた優希は、ちょっと大げさだねと苦笑いを浮かべていた。
「ったく。顔に傷を作るほうが悪ぃんだ。」
「・・・ごめんなさい。」
何度目かの小言を永倉に言われ、優希も返す言葉がない。
そんな永倉に、優希は向き直ると、畳に手を突き、頭を下げた。
「永倉隊長、明日からご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します。」
優希なりの、けじめなのだろう。
零の隊長として、優希は永倉に頭を下げた。
今回、零を手伝う隊長の中で、おそらく一番危険に近づくのは永倉だろう。
「承知した。それより、早く片付けねぇとな。」
「うん。とりあえず、今は烝の報告を待つしかないけど・・・。」
そんな二人の会話を、奥村は自分がいていいものかどうか悩みながらも聞いていた。
奥村の様子に気がついた永倉は、話もそこそこに切り上げ、奥村に問いかけた。
「そういやお前、毎日ゲン太達のとこ、行ってんだってな。」
「あ、はい。休憩になってしまえば、やることもないですから。」
「え、奥村君、ゲン太達を知ってるの?」
優希の問いかけに、奥村は二人の子供を永倉に紹介して貰った経緯を話した。
「さきとゲン太、夜風さんが来てくれないと寂しがってますよ。」
「そっかぁ、最近仕事が忙しくて、いけてないもん。」
「やっぱ、さっさと片付けねぇとな。」
「そうだね。奥村君、二人に近いうちに必ず行くからって伝えておいて?」
「はい。分かりました。」
優希の傷に視線を向け、少しの不安を抱えながらも奥村は頷いた。
そして、もう遅いからと、永倉と奥村は優希の部屋を後にした。