入り口で出会った少女の後を付いていく。
しかし、頭の中は必死に今の状況を理解しようと動いていた。
そのため、少女が立ち止まったことにも気が付かず、見事にぶつかってしまった。
「うわっ、すみません!」
「大丈夫ですよ。ところで・・・」
少女は周りを見渡すと、声を潜めて問いかけた。
「あなたは、何者ですか?」
「え・・・」
先ほどのやわらかい雰囲気とは打って変わった、力のある視線を向けられ、答えに戸惑ってしまった。
ましてや、自分ですらこの状況を理解できていないのだ。
そんな青年に、少女は言葉を続けた。
「着物からして、あなたがここの隊士の知り合いだとは思えません。
だいたい、そんな格好で外にいたら、切られても文句は言えませんよ。」
よく分からないが、彼女は自分の身を案じてくれて、中に入れてくれたらしい。
「・・・あなたは、俺を切らないんですか?」
青年の問いに、少女は驚いたように笑った。
「私は、・・・私は、女ですから。」
「・・・あ。」
それもそうだ。馬鹿な質問に、頭をかいた。
「それに・・・。」
少女の声に、うつむけていた顔を上げた。
「それに、何か事情がありそうでしたから。」
そういって少女はくすくす笑い出した。
「倒れていたので、声をかけようと近づいたら、いきなり起き上がって周りを見渡して5分ほど固まっておられたので。」
そんなに見られていたのか。
何だかいたたまれなくなり、またうつむいた。
「とりあえず、話を伺います。ただし、ここは新選組屯所です。間者と判断された場合は死を覚悟してくださいね。」
笑顔で言われた言葉に、冷や汗が背中をつたった。