「部屋で待っていてください。いくら浅いとはいえ、早く洗わないと駄目ですよ。
でも、このくらいなら傷跡も綺麗に消えるはずです。」
奥村のすらすらとした言葉に、優希も永倉もぽかんとして彼を見つめた。
その視線に気がついた奥村は、困ったように頬をかきながら話し出した。
「あ、俺、こんなですけど一応医大生なんです。」
「い、いだいせい?」
聞き慣れない単語に、優希がおどおどと繰り返した。
「そっか、えっと・・・。先の時代では、医学を勉強する所に通っているんです。
まだ未熟で、医者の卵とも呼べないかも知れませんが、傷を見ることくらい簡単です。」
「へぇ、すごい人なんだね。」
「それで、平助の言葉で優希を探してたのか。」
「そうなんです。探す事もなく会えましたけど。」
奥村の意外な知識に、永倉と優希は驚いた表情を見せた。
「じゃ、優希の傷は、痕は残んねぇんだな?」
「大丈夫だと思います。一応、救急箱を持ってきますから、部屋で待っていてください。」
奥村はそういい残して、奥へと消えていった。
優希は、自分より少し背の高い永倉を見上げて話す。
「奥村君、なんか色々特技を持ってるんだね。」
「あぁ、お前と違ってな。」
「な、永倉さんだって、剣術馬鹿だもん!」
「・・・なんか言ったか?」
「いえ・・・何も・・・」
永倉の視線に無言の圧力を感じて、すぐさま視線をそらす優希。
そんな優希に永倉は、ふっと微笑むと、いくぞ、と小さく頭を小突いた。
優希も、永倉の言葉に笑顔を返し、奥村が来るであろう優希の部屋へと向かっていった。