元治元年3月。
春の陽気が漂う中、一人の青年が新選組の屯所前に佇んでいた。
自分がどうしてここにいるのか、さっぱり分からない。
ただ、明らかに自分が回りと違う格好をしていることだけは分かった。
「いったい、ここは・・・」
気が付いてから、一歩も動けないでいる青年の後から、おずおずと近づく影。
何度かのためらいの後、小さな声が発せられた。
「あの、何か御用でしょうか?」
その声に振り向くと、自分よりも小さな背丈の少女が自分を見上げていた。
「門番いないし、どうしたんだろ・・・」
そう呟いて周りを見渡す少女も着物姿だ。
やっぱりおかしいと、頭を抱えた青年は少女に問いかけた。
「すみません、ここはどこでしょうか?」
「新選組の屯所ですけど。」
首をかしげながら答える少女の言葉に、頭が真っ白になる。
「新選組・・・ははっ」
急に笑い出した青年に、少女は戸惑いを見せる。
「あの、どなたかに御用でしたら、中に入られますか?」
少女の言葉に、少年はただうなずくしかなかった。