「とはいえ、いかれた野郎が相手だ。くれぐれも気を抜くんじゃねーぞ。」
「分かってますよ。とりあえず、烝をもう少しお借りします。」
「あぁ、かまわねぇ。」

そこまで言うと、土方は思い出したように話し出した。

「そういやお前、奥村に余計な事話してたな。」
「…あ、歓迎会の日ですか?聞いてたなら、声かければいいのに。」
「隊の人間じゃないやつに、べらべら話すんじゃねーよ。」
「もぅ、彼は隊の人間ですよ。それに、なんとなく、彼には話したほうがいいと思ったんです。」

そういって笑う優希に、土方はため息をついた。

「それはいつもの、勘ってやつか。」
「はい。」
「はは、優希の勘は当たるからな。歳、そんなに攻めなくてもいいだろう。
 私も、彼は悪い人間とは思えん。」
「俺だって、善人か悪人かの判断くらいつくわ。」

土方が諦めたように言葉を投げると、優希の後ろの障子が開いた。

「土方さん、失礼するぜ。お、近藤さんもいたのか。」
「おぉ、永倉か。どうした。」

顔を出したのは永倉だった。朝の稽古後なのか、稽古着姿だ。