「さて、そろそろ戻ろうか。」
広間に向かって歩く優希の後姿を見ながら、奥村は思った。
ここにいる新選組の隊士達は、自分と同じなんじゃないかと。
ここに来た時、皆がすごく大人に見えた。
歳が同じだと、沖田や優希に言われても、自分とは違うと思っていた。
命をかけて生きてきている、貫禄のようなものがあった。
でも実際は、さっきのように寂しそうに笑う姿が、本当の姿なのではないか。
友達と笑いあって、大人に甘えて、そんな生活を望んでいる気がした。
藤堂と仲良くなれそうだと感じたのも、彼の本心を少し見た気がしたからだ。
ここにいる人たちも、人間だ。
歳相応の気持ちを押し殺して、生きているのだ。
そう思ったら、もっと彼らを知りたくなった。
優希が言ってくれた、自分がここに来た意味を見つけるまで、彼らと仲良く過ごしたい。
そう思うと、自然と広間に向かう足は軽くなる。
奥村の視線の先では、先に広間に入った優希が、藤堂に手招きされていた。
ごく自然に自分の場所に収まった優希は、入り口に突っ立っている奥村に声をかけた。
「奥村君、何してるの?早くおいでよ。っていうか、平助君の相手して。」
「な、優希そっけなくない?」
「だって、平助君酔ってて五月蝿い・・・」
早くと笑顔を向けてくれる優希に、奥村はこの時代に来て初めて、自分の居場所を見つけた気がした。