「私の隊はね、少人数精鋭部隊なの。」
優希は、自分の隊の仕組みから話し出した。
「新選組の主な隊は、隊長以下に大体10人前後の隊士がいるんだけど、私の隊は私含めて4人しかいないの。奥村君に紹介したように、烝がその一人。」
「あの、山崎さんは監察方ですよね。監察って、土方副長の直属の部隊で、他の隊には所属してないんじゃないんですか?」
奥村は、自分が本から得た知識との違いを優希に尋ねてみた。
山崎烝は諸士調役兼監察方、主に隊内外の情報収集の役目を負っていて、土方直属の部隊のはずだ。
それを優希は、自分の隊の隊士だと言っている。
「あぁ、烝はね、ちょっと特別なの。」
そういって優希は、少し笑った。
「烝は監察の中で唯一他の隊に所属している隊士なの。零はね、普段の隊務は他の隊と同じなんだけど、別任務が少し多くて・・・仕事柄、どうしても監察の役目が大事になってくるから、土方さんが一人分けてくれたの。」
優希が言葉を選びながら、また濁しながら話を進めていく。
「それで、私が烝を選んだの。烝には、土方さんの仕事と掛け持ちになっちゃうから申し訳ないんだけど、忍の実力には一番信頼が置けるから。」
「そうなんですか。」
「零といっても違うのはそのくらい。やってることは、皆と同じ。まぁ、余分があるんだけど、これは幹部の人もほとんど知らないからここまでね。」
そういって、優希は月を見上げた。
奥村は、そこまで聞いてどうしても気になることがあった。
「何で、そんな大変そうな隊を、女の夜風さんが率いてるんですか?」
その言葉に、優希は奥村に顔を向けると、少し悲しそうに笑って答えた。
「・・・女だからだよ。」
「・・・え?」
それ以上、優希はその問いに触れなかった。
「あ、帰ってきたみたい。」
「へ?」
優希が上を見上げながらお帰りと声をかけると、屋根の上から人影が降りてきた。