奥村の言葉に、優希は一瞬戸惑いを見せた。

「・・・零番隊のこと?」
「はい。僕に教えてください。」

優希は、少し考えるそぶりを見せると、話し出した。

「私ね、生きている中で自然に起こる出来事には、無意味なものはないって思うの。」
「え?」

突然の話に、奥村は首を傾げる。

「自分の起こす行動には、無意味なものもあるけど、どうしようもなく起こる出来事は、きっと何かしらの意味があるの。
 だからね、奥村君がここに来たのにも、きっと何か意味があるの。」
「俺が来た意味・・・」
「そう、だからその奥村君が零番隊のことを知りたいなら、話せる範囲でなら、話してあげる。でも、その前に一個聞いてもいい?」
「何ですか?」

優希は少しためらった後に、奥村に問いかけた。

「奥村君が零番隊の事を知らないって事は、未来には伝わってないの?」

その事実を伝えることに、奥村は戸惑った。
ここで頷くと、彼女の存在が、否定されることにはならないだろうかと。
しかし、頷かない事には、彼女に零番隊の事を尋ねる事はおかしい。
奥村は、少しの不安を抱きながら頷いた。

「はい。俺が読んだ本には、載っていませんでした。」
「じゃあ、奥村君は私の未来は知らないのね。」

少し安心したような表情を見せる優希を、奥村は不思議に思った。

「未来を知っていると、きっとこの先辛くなるから・・・。私の分だけでも、知らないなら良かった。」
「どういう意味ですか?」

理解できていない奥村に、優希は少し寂しげに笑った。

「いずれ分かるよ。それより、教えてあげる。零番隊のこと。」

未だに難しそうな顔をしている奥村をよそに、優希は話し出した。