優希が最初、自分が隊士だということすら話してくれなかった事を、奥村は藤堂に話した。
「なるほどね。優希はさ、この新選組でもちょっと特殊な隊を持ってるから。」
「零番隊だろ?」
「うん。ま、ここにいたらいずれ分かるよ。」
「永倉さんにも同じ事を言われた。詳しくは話せないとも。」
「別に話しちゃまずいわけじゃないんだけどさ、正直、俺たち仲間ですら、優希の仕事は全部知らないんだ。
新八さんが話せないって言ったのも、半分はそういう意味だよ。」
藤堂は、そこまで話すと立ち上がった。
「気になるなら、本人に聞いてみなよ。優希なら、話せるところまでだったら教えてくれるからさ。」
「そっか。」
「あ、ただし、新八さんに見つかるなよ。怒られるから。」
「永倉さんは、優希の恋人なのか?」
「うーん、恋人って訳じゃないけど・・・」
お互いすごく大事な人なんだよ、と藤堂は笑った。
「俺も、昨日の優希の遅刻の埋め合わせに、今日一緒に甘味処行っておごってもらうんだけど、さっきはしくじったな。新八さんにばれたし。」
そういって顔をしかめる藤堂を見て、奥村はやっと自分が連れてこられた意味が分かった。
「逃げるのに、俺を利用したわけか。」
「ま、そんな感じ?」
そろそろ行くか、という藤堂の声にしたがって、奥村は台所へと向かっていった。