新選組屯所への滞在が許された最初の朝。
奥村は、自分に割り当てられた部屋の中で目を覚ました。
「・・・やっぱり、夢じゃないって事か。」
布団の上に身を起こし、部屋をぐるっと見回して小さくため息をついた。
タイムスリップというありえない体験から一晩。
どうやらそろそろ現実を受け止める必要がありそうだ。
とりあえず布団を畳むと、昨日山崎が用意してくれた着物に着替える。
「・・・じぃちゃんの教えが、こんなとこで役に立つとはな。」
慣れた手つきで袴まではき終えると、ちょうど外から声がかかった。
「奥村君、起きてる?」
「あ、起きてます!どぉぞ。」
「じゃあ、失礼します。」
律儀なあいさつのあと、障子が開けられた。
顔を出したのは優希だ。
彼女もやはり袴姿だったが、さすがに朝から刀は差していなかった。
「夜風さん、おはようございます。」
「おはよう。あのね、朝食もって来たの。まだ紹介されてないし、他の隊士たちと一緒じゃ食べずらいかなって思って。」
そういって優希は奥村の前に、朝食ののった膳を差し出した。
「あ、ありがとうございます。助かりました。」
「いーえ。冷めないうちに食べて。でね、今日なんだけど・・・」
奥村に朝食をとるように促して、優希はその前に座った。
遠慮なく箸を動かしながら優希の話に耳を傾けた。