「ようは、お前の品定めだ。」

土方が口を開くと、奥村は事前と背筋が伸びる気がした。

「俺たちは、お前を信用しちゃいねぇ。だが、行くところがねぇんじゃぁ、放り出すわけにもいかねぇ。当分は、賄方で、お前をじっくり見させてもらう。」
「歳、あんまりおびえさせるんじゃない。奥村君、どうだろう?」

行き先がない自分は、ここを追い出されたら、生きていくことはできない。
奥村の答えは、ここに来る前から決まっていた。

「何でもやります!置いてください!」

そういって、頭を下げた。
その気持ちのよい返事に、近藤は満足げにうなづいた。

「じゃあ、そうと決まれば歓迎会だな!」

ことが済み、一番に声を上げたのは藤堂だ。

「おぉ、今夜はもう遅せぇから明日あたりどうだ?」

藤堂の言葉に原田が反応した。

「ったく、お前らは酒の事しか頭にないのかよ。」
「何だよ。新八さんだってそうじゃん!」

藤堂の突っ込みを、無視と言う最強の武器で流すと、永倉は奥村に声をかける。

「お前が先の時代から来たって事は、伏せて過ごせ。そのほうが何かと楽だからな。」
「奥村君は、私の知り合いって事になってるから話あわせてね。」
「優希の知り合いなら、誰も手出しはできないね。」
「・・・総司、どういう意味?」
「ぼ、僕は別に変な意味で言ったわけじゃないよ!」

そんなやり取りを、奥村は見つめていた。
自分は今から、この人たちと生活するのだと。

本の中で知った人たちが、今奥村の前に実際に生きている。
新選組のすべての歴史が、頭に入っているわけではないが、彼らの未来を知っている。
複雑な心境の中、彼らの中心で笑う少女を見た。

彼女の存在は、歴史にはない。
こんなにも彼らの中心で笑っているのに・・・。

近藤の部屋からは、その後もしばらく笑い声が響いていた。