その夜、局長である近藤の部屋には、一部の幹部が顔をそろえていた。
部屋の主である近藤をはじめ、副長の土方、一番隊隊長沖田総司、十番隊隊長原田左之助、八番隊隊長藤堂平助、そして永倉に優希といった、試衛館時代の同士達である。

そしてその真ん中で、居心地の悪そうに小さくなって座っているのが奥村である。

「さて、君が優希の言っていた、奥村雅貴君だな。」 
「はっ、はい!」

緊張のあまり上ずった声で、奥村が返事をする。

「事情は事前に永倉から聞いている。未来からきたという証拠の品も見せてもらった。確かに、今の世の中では考えられないものだ。君の話を完全に否定することはできない。」

永倉は、優希が巡回に出ている間に、戻ってきていた近藤と土方に、大方の事情を説明していた。もちろん、奥村から借りた携帯電話と免許証も持参したのだ。

「だがね、信用できないことも残念ながら事実だ。」

近藤は、すこし苦笑いをしながら奥村に声をかける。

「そこでどうだろう。とりあえず賄方として、ここで働いてみないか?」
「まかないがた・・・ですか?」
「あぁ、ちょうど一人、女中が辞めてしまってね。まわらないことはないんだが、男手があれば何かと助かるだろうからな。な、歳。」

近藤は、部屋の隅で奥村を見極めている土方に声をかけた。