「話は戻りますが、局長副長ともにただ今席を外しております。夕食の時間にはお戻りになられるはずです。」

山崎の言葉に、優希と永倉は視線を合わせた。

「じゃあ、戻ってきてからだね。」
「あぁ、それまでは出歩かれても騒ぎになるだけだが・・・。」
「あ、それなら、私の部屋に・・・。」
「夜風隊長は巡回のお時間が過ぎています。」

山崎の言葉に、優希の動きが止まった。

「すでに、八番隊の皆さんは出発されてます。藤堂隊長が、夜風隊長の隊士とともに門前でお待ちです。」
「うわっ、大変!」

優希は慌てて永倉の部屋を飛び出した。
そしてすぐまた部屋に顔を出した。

「永倉さん、この後は?」
「なんもねぇよ。奥村なら、俺の部屋に置いとく。」
「ありがとう!それと烝!奥村さんに着物、貸してあげて。」

それだけ告げると、優希は待っているであろう藤堂の下へ走っていった。
そんな優希を見て、奥村は呟いた。

「夜風さんって、もしかして隊長をされてるんですか?」
「あー、あいつ言ってねぇのか。」

永倉の言葉に、奥村は頷いた。
優希は、自分のことに関しては、所属も役職も話していないのだ。

「あいつのことは、まだここの人間じゃねぇお前には、詳しく話すわけにはいかねぇんだが・・・」

少し言葉を選んだ後、永倉が告げた言葉は、奥村が知らない歴史だった。

「あいつは、零の隊長だ。」
「ぜろって、零番隊ってことですか?」
「あぁ。」
 
自分の記憶を辿ってみても、新選組に女性の隊長がいたという話は聞いたことがないし、ましてや零番隊の存在すら歴史には残されていない。

「とりあえず、山崎が着物持ってくっから、着替えとけ。」
「・・・はぁ。」

奥村の考え込む顔を見て、永倉が付け足した。

「ここにいることになれば、あいつのことはすぐに知ることになるさ。」

そこに、着物を持った山崎が戻ってきたため、話がそれ以上続くことはなかった。