「とりあえず、近藤さんに許しを得ないとな。」

永倉の言葉に、奥村が反応する。

「近藤って、近藤勇?」
「うん。すごいな、未来で新選組って結構有名なんだね。」

優希が、感心したように呟いた。

「奥村、とりあえず近藤さんに話をつけねぇ事には、ここにいられねぇ。土方さんにも話さなきゃならねぇ。今俺らに話したようなことを、もう一度しっかり伝えろ。」

土方という名に、奥村は唾を飲み込んだ。
土方歳三、鬼の副長と自分たちの時代には伝わっている。

「じゃ、いこうか?」

優希の声に、腰を上げようとした時、自分の頭上から声がかけられた。

「失礼ですが、局長副長ともにただ今席をはずしております。」
「へ!?」

奥村が、驚いて声のする方へ顔を向けると同時に、自分の前に忍装束を身に付けた男が降り立った。

「烝、いつ降りて来るのかと思ったら・・・。驚かしちゃ駄目でしょ。」

一人冷静な優希は、永倉でさえもあいた口がふさがっていない状況を見てため息をついた。

「や、夜風さん、彼は・・・」
「山崎烝、観察方の隊士で、私の部下なの。」

優希の紹介に、山崎が小さく頭を下げる。

「話は聞かせてもろた。これが仕事やけん、堪忍してや。」

無表情のまま、奥村に一言謝ると、立っている優希と永倉の前にひざを着いた。

「永倉隊長、お邪魔して申し訳ありませんでした。夜風隊長のつれてきた者とはいえ、目につくと気になる性分でして・・・。」
「あぁ、別にかまわねーよ。」

一通り詫びた後、山崎は本題に入った。