そしたら。
当麻くんは、フッと笑って……身体をゆっくりと起こした。
そして、私の手も引っ張って、起き上がらせてくれる。
ふたりでベッドに座りこみ、見つめ合う。
「……やった」
「えっ?」
「やっと、さやから誘ってくれた」
「…………?」
キョトンとする私を見て、当麻くんは優しく微笑む。
「いっつもさ、オレばっかだろ。
確かにヤりてーなって思うけど、なんかひとりよがりかなーって思ったり……な。
けど、今は……さやから言ってくれた」
そう言って、当麻くんは切なそうに目を細めた。
さっきまでのドキドキとはまたちょっと違う痛みが胸に走る。
「今のって、もしかして……ワザと?」
「たりめ~じゃん。誰がヤるかよ、鶴ん部屋で。
ココで、さやが乱れてたとか……想像しただけで後々ムカつくし?」
「もぉ……びっくりさせないでよね」
「なぁ、いつ? 今日は流星さんが見張ってっし。
オレは早い内だと、ありがたいんだけど」
当麻くんは甘い表情で、私の髪を指で丁寧にすく。
……もぉ、そんな顔で見つめないで。
「いつって。そんなのわかんないよ。
でも……いつでもいいよ」
私がこんなコト言うなんて。
ドキドキしすぎて、目眩がする。
目の前に当麻くんがいるのに、緊張でのぼせてるのか、
なんだかフワフワしてきた。
「わかった……。じゃあ、そのうち」
って言って、当麻くんは私に微笑んで
そっとキスをした。
傷口が痛むのか……
いつもとは違う、触れ合うだけの優しいキス。
たまには、こんなキスも
初々しくて、いいなって思った。
触れている場所は
ほんの少しだけど……
重ねた唇から、
当麻くんの愛が、
たくさん、
伝わってくるような気がした。
少しして、鶴くんの部屋を出ると、
扉の外になにかが置いてあるのに気付いた。
あ……コレって。
それは、部屋着と、タオルと消毒液。カットバンも置いてある。
……もしかして、キララちゃんが?
あんな風にして怒って出て行ったのに、すごく優しいね。
やっぱり鶴くんの妹だぁ。
当麻くんのケガを簡単に消毒して、着替えてもらった。
サイズは意外にも大丈夫だった。
「……似合うね」
「笑ってねぇ?」
「ううんっ」
フフッ。
キララちゃんのイタズラなのか、
着替え用にと置いてあった服は、
胸もとにキャラクターのプリントがしてある、かわいいTシャツと、
チェックのハーフパンツ。
なんだか当麻くんらしくなくて……笑っちゃう。
「なんだ? このフざけた服」
「たまにはいいよ!
かわいさ溢れてて、みんなのウケいいんじゃないかな」
「かわいいねぇ……。ま、さっきの泥と血ぃついた服でウロついてたら、
あのプッツン女に、また文句言われそーだしな。しばらくコレで過ごすか」
そう言って、当麻くんはズボンのポッケに手を突っ込む。
けど、不思議。
初めは笑えてた格好だけど、当麻くんが着てると
すごくカッコ良く見えてきちゃうんだよねぇ。
「……どした?」
「ううん。早く下に下りよう。
きっと、もうとっくにビンゴ終わってるよね」
ポケットに手を突っ込んでいる当麻くんの腕に、腕をかけた。
「誕生会にビンゴねぇ……なんかまるでパーティだよな」
ククッと笑う当麻くん。
「そうだ! 鶴くんへのプレゼント、持ってきた?」
「あぁ。とりあえずな。喜ぶかどーかは、わかんねぇけど?」
「へぇ~。結局なににしたの?」
「……あとで教えてやる。とりあえず、下行こーぜ」
当麻くんはニッコリ笑い、私に軽く肩をぶつけた。
……そうだ。
当麻くんに聞かないといけないコトがあったんだ。
「ねぇ、さっきからちょっと気になってたんだけど」
「んあ?」
当麻くんの胸もとを見つめる。
「私があげたプレゼントは?」
――ピタリ。
と、当麻くんは階段を下りる足を止めた。
顔を見ると、なんだか苦笑いしてるし。
「あのな、ちょっと落ち着いて聞けよ?」
「え、なに?」
「オレは、形は気にしね~から……。くれたっていう、その気持ちがありがたい」
なに言ってるんだか、わかんないよ。
「ちょっと、ハッキリ言ってよ」
「……悪い、ちぎれた」
え?
ちぎれたって……
どういうコト?
「実は昨日な、あのまま現場に向かったんだよな」
「現場って……?」
「流星さんがな、昨日オレに情報くれた。実は昨日の晩……待ち合わせて」
ウソッ!
「声かけたのは、お兄ちゃんの方なの?」
そう言えば、出掛けに『約束忘れんなよ?』とかって言ってたよね。
「いや、ずっとチャンス狙ってたのはオレ。
けどさ、相手大学生だったしな……流星さんのが詳しくてさ」
「当麻くん、スーツだったよねぇ」
「あぁ、ちゃんとバイクに着替え積んでたからな」
用意いいな……。
「そうなんだ……」
「けどソイツら結局昨日はナンパも不発でな。
朝までカラオケ入ってた。
そしたら、朝帰りのオンナ引っかけてたからさ、
ホテル入る前に取っ捕まえて、ボコったワケ」
「そうなんだ……。女の子を助けたのはいいけど、
そんなの、当麻くんがそこまでする必要ないのに。
もう、ケンカはやめてね?」
当麻くん、納得するかと思ったけど、
意外にも食い下がってきた。
「いや。そーじゃねぇんだよな。オトコとして、そーいうヤツらは絶対許せねぇ。
……ケンカしたけど。オレ、間違ってたか?」